伝統を受け継ぎ、継承する。
今回お話を伺った、田中鎌工業・四代目 田中勝人さん(左)と五代目の田中裕紀さん(右)
今回は、その松原包丁の伝統を受け継ぎ、今も新作を作り続けられている田中鎌工業の四代目・田中勝人氏にお話を伺いました。
歴史の長さと、切れ味の良さで長崎県の伝統的工芸品に指定されている「松原包丁」。その歴史は古く、1185年の壇ノ浦の合戦にまでさかのぼることができます。そんな歴史ある松原包丁も現在ではわずか3軒を残すのみ。
鬼気迫る表情!真摯に向き合う包丁作り
包丁を打っているときの表情は真剣そのもの。鬼気迫る迫力。命を削ってるというように感じました。
Q: 現在四代目ということですが、この仕事に就て何年になりますか?
田中:今年で35年になります。当時大学生だった私は後を継ぐ気なんてなかったのですが、先代の父から「帰ってこい」の一言で戻ってまいりました。
当時は長男は家業を継ぐのが当たり前の世の中。「イヤ」という選択はできなかったですね。しかも当時はバブル真っ只中。友人達は楽しく遊んだりしているのに、自分はひたすら汗まみれの修行の毎日。辛かったですね。
四代目から五代目へ。技術は次の世代へ。
Q:包丁作りへのこだわりをお聞かせください。
田中:よく切れることはもちろんですが、使いやすくてかっこいい、モノとしての美しさにはこだわっています。背中が反っていたり、フォルムが細身で尖っているものが好きですね。
ただ、女性の方は尖っていると「怖い」と感じられる方もいらっしゃるので、使われる方のことを考えて女性向けの包丁は柔らかいフォルムにしたりします。
Q:包丁作りで特に大事にされていることは?
田中:とにかく「品質」。これだけはごまかしがききません。
自分では98点の出来であっても、お客様は残りの2点に気が付かれます。そしてちゃんと指摘が入ります。そのときには気持ちが凛としますね。100点を出し続けないといけないプレッシャーはあります。でもそれがこの仕事の面白さなのかなと思えるようになりました。
あと、お客様の使っておられる姿を思い描きながら、一本一本丁寧に作っています。
最高のモノを作る。
インテリアショップとのコラボ包丁。
イズミファニチャー オリジナル包丁「銀」(写真上)と「青」(写真下)
Q:イズミオリジナルの包丁について聞かせてください。現在「銀」と「青」の2種類のシリーズがありますが、この2種類になった経緯を教えてください。
田中:まず、切れ味が最高の包丁を作ること。そのためには最高級の素材を使うことを考えました。一つ目は「青紙」と呼ばれる最高級の日本鋼素材。昔から受け継がれている伝統的な素材です。
もう一つは「銀三」と呼ばれるステンレス素材。錆びにくいと言われているステンレス鋼の中でも最高級のものです。大量生産ではなかなか使うことが難しい高級素材を使って、理想的な切れ味とデザインを持つ包丁を作らせていただくことにしました。
Q:それぞれの包丁の特徴を教えてください。
田中:「銀」は「銀三」にステンレスとニッケルを混ぜ合わせ作ります。また「銀三」は叩けば叩くほど強くなる性質を持っているので、非常に硬く、切れ味の落ちない包丁になります。
仕上げで研いだときに現れる美しい「ダマスカス」模様も大きな特徴です。この模様は人間の指紋と同じで、世界にただ一つ、同じものは2つとありません。
「青」は先ほど説明したように、日本古来の「青紙」という最高級の鋼を使っているので、切れ味、重さ、使い勝手が非常に優れています。梨地と呼ばれるざらっとした表面の仕上げも特徴です。
Q:今後やってみたいことは?
田中:今はオールステンレスの包丁作りを研究しています。ステンレスは「切れない」素材と言われていたのですが、ステンレスの新素材も開発されたりして可能性があると思います。やはり職人なので、常に新しいことにはチャレンジしていたいですね。
あと、個人的な話なんですが、日本刀を打ってみたいですね。実はもう材料は用意してあるんです(笑)
お話を伺って、ものづくりの素晴らしさ、大切さを改めて感じました。
ただの「かたまり」である鋼が、美しい包丁になっていくのを目の当たりにし、普段はニコニコされている田中さんが包丁を作るときに見せる鬼気迫る表情をみると感動すら覚えます。
工場で大量生産されるものとは違う、一本一本丹念に作られた包丁。実際手にすると愛おしく思えて大切に使いたいという気持ちが湧き上がってきます。
「使い捨て」が当たり前のようになった今という時代に、一つのものを大切に永く使うということの大切さを気付かされました。
(文章:青山)
名称 | 田中鎌工業 有限会社 |
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住所 | 長崎県大村市松原本町372 |
連絡先 | 0957-55-8551 / fax: 0957-55-3983 |
メールアドレス | syu@e-kajiya.com |
ホームページ | http://www.e-kajiya.com |