人間工学と椅子の関係について
「在宅勤務」「テレワーク」という言葉も一般的になってきました。
オフィスだけでなく自宅でも長時間デスクワークをする機会が増えてきています。
しかしどこで作業をするにしても、長時間のデスクワークにより疲労感が増すと、作業効率が落ちてしまいます。
そんな悩みは使用する椅子の形次第で長時間の作業でも疲労感を軽減できるということをご存知でしょうか。
今回は使い勝手よく体に負担の少ない椅子に関して、人間工学の観点からご紹介していきます。
そもそも人間工学って何なの?
「人間工学」という言葉を聞いたことがありますか?
エルゴノミクス(Ergonomics)やヒューマンファクター(Human Factors)とも呼ばれ、今では私たちの生活の中にすっかり定着しています。
例えば毎日使っているスマートフォンを持ちやすくて使いやすくするにはどのような形がいいのか、また画面のアイコンのデザインや配置をどうすれば、誰もが直感的に使えるのかなど、人間のあり方・特性を基本にして、使いやすく快適で疲労が少ない、安全な機器・環境・作業をつくり出すための考え方や手法を追究するのが人間工学なのです。
人間工学の起源は1850年代のヨーロッパにさかのぼりますが、日本にはアメリカから1920年に紹介されました。
そして、1964年には「日本人間工学会」が設立され、啓蒙・普及・研究活動が行われています。
人を主体にして、人が使いやすい道具や機械とのインタフェースを考えることがテーマであり、身近なところでは椅子やテレビのリモコン、さらにカーナビやWindowsパソコンの画面デザインまで、人が手にするもの、目にするものすべてに人間工学が取り入れられています。
人間工学は、医学・工学・心理学などが有機的に結びついた総合科学と言えます。
現在では、高齢者や障がい者を主体に、誰もが使いやすい「ユニバーサルデザイン(Universal Design)」の考え方、またこれまでは製品の企画・設計から無自覚に排除されてきた高齢者や障がい者、子どもなどの視点を積極的に取り込むことで、一般の人も使いやすい製品をつくる「インクルーシブデザイン(Inclusive Design)」も注目を集めています。
いずれも人間工学のひとつの分野であり、社会情勢に合わせて今後もますます発展していくことが予想されます。
人間工学に基づいたデザインの特徴
人間工学に基づいたデザインは、身の回りのさまざま道具に活用されているのをご存知ですか?
人間工学(エルゴノミクス)という言葉自体は、人の特性をもとに周りの環境や道具の使い勝手などを研究する学問のことを意味しています。
そんな学問に基づいて作られた椅子はエルゴノミクスデザインと呼ばれます。
オフィスチェアやキッズチェアの中でも、人間工学に基づいてデザインされた椅子には多くのメリットがあります。
エルゴノミクスに対応したデスクチェアの代表的な特長としては以下のとおりです。
①身体が疲れにくい
②良い姿勢を維持できる
③好みの姿勢を取りやすい
①身体が疲れにくい
椅子へ座っていると、1~2時間ほどで腰やお尻など身体が痛くなった経験はありませんか。
実は、人間は立った時の姿勢が一番楽で、座ったときの姿勢は身体に常に負荷がかかってしまっている状態なのです。
お尻に圧が掛かることで血流が悪くなったり、猫背の前傾姿勢で首周りや腰が痛くなったりなど、現れる不調の症状はさまざまです。
身体が不調になるほとんどの理由は、座ることで姿勢が悪化することが原因だと言われています。言い換えれば立った状態のキレイな姿勢を維持できれば、身体への悪影響を少なくできるのです。
実際に身体へ悪影響を与えにくいという理由で立ったまま作業ができるスタンディングデスクなども人気を集めています。とはいえ、座ってゆったりと作業をしたい方もいるでしょう。
そこで人気を集めているのが人間工学に基づいてデザインされたデスクチェアです。
人間工学に対応した椅子を使うことで上体を立っている姿勢に近づけられるため、身体が疲れにくくなる効果を期待できます。
更には、一般的な椅子よりも座り心地が改善され、長時間の作業も快適に行えるように工夫がなされています。
②良い姿勢を維持できる
人間工学に基づいてデザインされている椅子は、正しい姿勢を維持することで身体の負担を減らすことができます。
「椅子へ座ったときの良い姿勢」というと、背筋をまっすぐ伸ばしているイメージがあるかもしれません。
実際には、少しS字を描いた状態の姿勢がベストだとされています。
人間工学に対応した椅子は腰元部分がカーブするよう、背もたれが膨らんでいたり、ランバーサポート(腰当て)がついていたりします。
人間工学に対応した椅子の中には、自然とS字カーブを描いた理想的な姿勢を維持できるようになっている商品もあります。
猫背や骨盤の歪み、姿勢の崩れが起こりづらい作りになっているため、日常生活にも大きなメリットを期待することが可能です。
人間工学に対応した椅子を使うことで、座った状態でもS字カーブを描いた理想的な姿勢を維持できるといえるでしょう。
③好みの姿勢を取りやすい
人間工学に対応した椅子の中には、椅子の高さを調節する機能や背もたれの角度を変えられる機能がついていることが多いです。
また、アームレスト(肘置き)の高さを独自に設定できるモデルも多いため、好みの姿勢を取りやすくなっています。
首元から頭を支えられるヘッドレストや、オットマン(足置き)がついているモデルであれば、さらに好みの姿勢を取ることも可能です。
人間工学をもとにデザインされた椅子を使うことで、椅子に座ったときの違和感やストレスを軽減する効果が期待できるといえます。
椅子への正しい座り方について
人間工学に配慮された椅子であっても、自分の体型に合っていない椅子を選ぶと効果が薄くなってしまいます。
場合によっては、身体へ余計な負担を掛けてしまうかもしれません。
椅子選びで重要なのは、正しく座れるかどうかがポイントになります。
椅子へ座るときには正しい座り方をイメージする必要があります。
人間工学に基づいた椅子の正しい座り方は以下のとおりです。
・椅子の背もたれまで奥深く腰掛ける
・腰をムリに反らず、猫背でもない状態
・骨盤を立たせる
中でもポイントとなるのは奥深くまで腰掛けられるかという点です。
人間工学に配慮された椅子はランバーサポートがついていることも多く、リラックスした体勢で背もたれに身体を預けても、骨盤を立たせた理想的な姿勢を取ることができます。
しかし、椅子の座面サイズがあっていないと、奥深く座ろうとするときに膝裏が座面へぶつかってしまい、足を前へ伸ばすような姿勢になってしまうケースも…
正しい椅子の座り方は、「奥深く腰掛けながら、足を垂直に近い状態で下ろし、足裏全体を床へつける」状態が理想的です。
人間工学に対応した椅子とはいえ、座面サイズなどがミスマッチで正しい座り方が出来なければ効果が薄くなってしまいます。
オフィスチェアやデスクチェアを購入するときは、座面の長さを調べて自身の体型にあっているかチェックしておきましょう。
一部のエルゴノミクスチェアは座面の位置調整にも対応しているため、あわせてチェックすることをおすすめします。
椅子やテーブルの高さは合っているか
人間工学に対応した椅子を新しく購入する場合は、以下のポイントに注意しましょう。
○適切な机の高さ条件
①机の高さは60~74センチ(その中でも72cmが日本人には最適)
補足:第二次世界大戦後、デスクの高さは74cmが日本の標準とされていました。
その後、2011年に、JOIFA(日本オフィス家具協会)がオフィスデスクの高さとして72㎝を推奨しました。74㎝から72㎝に至った経緯や理由をご紹介します。
・かつては70㎝だった
第二次世界大戦後、アメリカの基準がもとにされ、オフィスデスクの高さは74㎝が標準になりました。ただし、日本人の体格はアメリカ人に比べて小柄なため、実際には使いにくさを感じる部分もあったようです。
その点を考慮した結果、1971年からオフィスデスクの高さは70cmがJIS規格の基準になりました。
・現在オフィスデスクの高さは72㎝
その後、2011年に、JOIFA(日本オフィス家具協会)がオフィスデスクの高さとして72㎝を推奨しました。
理由は、日本人の平均身長が伸びためとグローバル化が進み、以前と比べて日本で働く外国の方が増えたためです。
また、車椅子でも使いやすくしたり、A4の書類を収納できる引き出しを設置したりするためにも72cmが最適だとされています。
②上腕を垂直に下ろすと、腕に90度ほどの開きがある
○適切な椅子の高さ条件
・椅子の座面の高さは36~45センチ
・足裏全体が床についている
・かかとに膝から先の体重が乗っている
・座面に比べて、膝先が平行あるいはわずかに高い状態
机や椅子の高さが自身の体型や身長に合っていないと血行不良などに繋がってしまうため注意が必要です。
オフィスワークなどのデスク環境を整える場合は、椅子と机の高さ関係がもっとも大切になります。
人間工学に対応した椅子を使えば必ず腰痛や肩こりの改善が期待できる、という訳でもありませんので、まずはデスク環境を整えられるよう、ベストな高さを確認しておきましょう。
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